それが大事なのに……

英國戀物語エマ 第二幕。最近になってようやく見てみました。
まだ途中なので最終的な判断は出来ませんが、原作ファンとして率直な意見を言いたい。

無駄なオリジナルシーン入れて、重要なシーンを端折るんじゃねーーー！！！

第一話から謎のオリジナルキャラが出てきて話を荒らした挙げ句、それ以降そのオリジナルキャラはストーリーに絡むことなくフェードアウト（５話まで見たけど背景にいる程度の存在となっていました）。そんな意味のないオリジナルキャラは出さないで頂きたい。変な話を挟んだおかげでメルダース家（エマが働いている家）の雰囲気が悪くなっちゃったじゃないですか。
雰囲気が悪くなったと言えば一番酷かったのはウィリアムとエレノアの話。
ウィリアムはエマの事を諦めてエレノアに婚約を申し込んだのに、エマと再会したらあっさりとエレノアを振ってエマに戻っていくという流れは、「ウィリアムひどすぎる！」と思わざるを得ない部分はあります。
ただ、ウィリアムがエレノアに婚約を申し込む事になったのには、ウィリアムの心境の変化が関わってきます。
身分の違い故にエマの事を諦めねばならないという事に納得出来ないが、それは家や個人の問題だけではなく今の社会全体の問題であるために自分の力だけでどうこう出来る問題ではない。
「ここで人生に絶望してフテ寝して、ショーペン ハウウェルを愛読するのは簡単だけど、それじゃ芸がない」
そう。ウィリアムは自分じゃどうにも出来ないと感じながらも、ただただどうにも出来ない事を嘆きはしなかったんです。
「階級がそれほど大事だと言うなら、一生その上流階級として生きてやる。あるべき姿とるべき態度、誰もが認める上流階級の体現者になったら、死ぬ時に全部捨てて死んでやる」
決して前向き決意ではないですし、その結果が何を生み出す物でもありません。でも、ヘタレはヘタレなりに階級という得体の知れない物と戦うと決めたんです。
しかも、いざそうやって生きていくと決めたのに、やはり色々と辛くなっていき、エマを思い出して涙するなんて良いシーンもあるのに……。
エレノアと婚約を決めたのだって、ただ単にエマを諦めてエレノアを選んだのではなく、上流階級の体現者たろうとした決断だったのですよ。
それなのに、何故アニメではウィリアムのこの話を丸々綺麗に省いてしまうのか！
これじゃ、「エマと上手く行かなかったからエレノアに乗り換えるかー」って感じで婚約した様に見えますよ！！

ストーリーを進める事を重視するためには細かい部分を省かざるを得ないと言うならば納得がいくのですが（いや、ウィリアムの話に関してははストーリー的にも重要な話だと思うんですけどね）、結構無駄なオリジナルシーンを追加しているから納得出来ない。
オリジナルシーンを入れてる余裕があるなら何故に原作のシーンを省くのか。
そもそも、エマという漫画にはストーリー的に重要じゃなくても「大事」なシーンがいっぱいあるんですよ。

オペラのシーンがないのはアニメだと作画とか音とかが面倒だからですか？

エマがただのメイドとは思えないくらい色々教育されている事をちゃんと描いた方が良いのでは？

ミセス・トロロープの家でエマが猿に絡まれて慌てるシーンは、アニメじゃ何でエマのリアクションがあんな淡泊なんです？

ヴィルヘルムがドロテアのコルセットを締めるシーンを何故省くのか！森薫作品におけるコルセットの重要性を理解しておられませんか？

エマー！眼鏡外したならつまずいて転べー！！

後半に行けば行くほど本当にどーでも良い様な事ですね（笑）。
でも、熱心な原作ファンなら俺が言いたい事をわかってくれるはず！

原作者の森薫さんは、人から
「車でもバイクでもなくて自転車で全力疾走しているようなマンガだ」
と言われた事があるそうです。
この言い方は結構エマという漫画を上手く表現していると思います。
この漫画は、ストーリーが良いとかキャラクターが個性的といった漫画としての魅力があるだけでなく、作者が本当に大好きな物を精魂こめて描いているんだなと感じる事が出来る作品なのです。
それに対してアニメの方は
「漫画と同じ道のりを車でさらーっと流してしまっているアニメ。おまけに、ちょくちょく安易な近道を選ぶ」
と言った印象です。
「自転車で全力疾走しているような必死さ」が感じられないんですよね。
必死さを表現するのは無理でも、もう少し原作を大事にしてくれれば良いんですけどねー。
単純にアニメだけを見ればさほど悪い物でもないんでしょうが、原作ファン、中でも作者である森薫さんの在り方にまで惹かれているファンには厳しい内容ですね。
そんな訳なので、アニメの方は少し間を空けてから続きを見てみようと思います。その間に原作をまた読み直しましょうかねー。
そんな事をすればアニメを見るのが更に厳しくなりそうですが（笑）。