セブン=フォートレス

セブン=フォートレスのリプレイも、先日発売になったラ・アルメイアの幻砦で6作目となりました。
ただ、毎年順調に出続けている作品な訳ではなく、一作目のアルセイルの氷砦(リプレイが雑誌に連載されていた当時はルールすら完成していなかった)からは随分な年月が流れています。
このラ・アルメイアの幻砦ですら、連載開始は4年前ですからね。
今ではF.E.A.R.の数々のリプレイで、主人公及び主役格のキャラを演じている大畑さん(ラ・アルメイアの幻砦では「Oはた」という表記ですが、最近は大畑顕という本名での表記が多いのでそちらに統一)ですが、本格的な主人公デビューはこのリプレイが最初です(異能使いの単発リプレイ「鳴神の巫女」での活躍が光ったために、主人公に抜擢されました)。
今でこそ「負けてから勝つ」という不屈の主人公を演じる大畑さんですが、このリプレイではまだまだ三下色が強いです。実際に格好いい主人公を演じているのはラストを含めた数シーンのみですが、後の大畑流の主人公の格好良さの片鱗は見せています。
今回はきくたけリプレイでは類を見ないほど悲劇的な最後を向かえてしまうのですが(その悲劇を招いたのがプレイヤーのファンブルではなく、プレイヤーのクリティカルというのはかなり皮肉)、ラスト付近では主人公としてのキャラがしっかり立っているので「悲劇だけどこれはこれでありかも」と思える雰囲気になっています。
しかし、序盤の大畑さんは徹底して三下風味で、常に下に下にと潜り込もうとしてしまったため、最初に出てくるボスがそれよりも下に潜り込まなければならず、至上最弱の魔王という奇妙なキャラクターに……。
まあ、おかげで魔王のキャラが立ったので面白い展開にはなったんですけどね(笑)。

次のセブン=フォートレスリプレイ「シェローティアの空砦」では、過去のセブン=フォートレスリプレイに登場した主人公などが再登場して全ての締めとなる話を展開するみたいなので、どんな展開になるのか楽しみです。
まあ、いつになるのかわかった物じゃないですけどね……。最近はリプレイを書く人が増えてきて、菊池たけしさんが手がけるリプレイは減っているとは言え、ナイトウィザードは次のステップに進むための準備が色々忙しいでしょうし、昔に比べるとその他のお仕事も多いでしょうからねー。

ナイトウィザードの展開も気になる所ではありますし、ナイトウィザードは俺のTRPGに対して関わり方を決定づけた作品であるのは確かですが、そもそもセブン=フォートレスとの出会いがなければ今の俺はないでしょう。
友人宅にあったRPGマガジンで初めてアルセイルの氷砦を読んだ時の衝撃は今でも忘れられませんからね。
今まで、TRPGリプレイと言えば「ゲームとしての遊び方の指南」とか「ゲームをプレイする上での参考資料」といった程度の内容でした。
もちろん、TRPGの遊び方を伝えるための本なのですから、その手法は正しい物ではあります。
しかし、正直言ってその内容ではTRPGは大して面白そうな物とは感じません。
やっている事は「ゴブリン退治」やら「迷宮探索」といった王道であり、そこに意外性のあるストーリーや手の込んだ仕掛けがあると言う事も稀。
ましてや、GMもプレイヤーも雑談みたいな話し方しかしませんので、はっきり言って読み物としては成立していない物が多かったです。
雑談というのは、参加しているその場の人間は大いに楽しいのですが、その内容をそのまま人に聞かせても存外に面白く感じられない物です。
俺が菊池たけしさんのリプレイに出会う前に読んだリプレイというのはまさにそういう感じでした。
確かにTRPGは雑談レベルの話で展開する事が多いですし、それでも参加している人が十分楽しめる物ではあるのですが、その内容をそのまま記述した所で面白い読み物にはならないのです。
俺も自分のサイトでTRPGネタを書いていた時期がありますが(ここ数年停滞中)、人が読んでも面白い様にするためには色々な工夫が必要だなと痛感しました。
「リプレイはTRPGの指南書ではあるが、TRPGの面白さを伝える物ではない」
というのが、従来のリプレイを読んだ感想でした。
中には、目新しい手法や凝ったネタを盛り込んだ物もありましたし、面白い発言で場を沸かせるプレイヤーがいた物もありましたが、それでも「TRPGを知らない人にも面白さを伝える」と言う域にまでは行っていなかったと思います。
しかし、アルセイルの氷砦はそんなリプレイとは全く違う存在でした。
まず、純粋に「読み物として面白い」
そして少年漫画のファンタジー作品の様な「無駄に壮大なストーリーと個性的な主人公達」
システム的な解説などはほとんどなく「ただただ面白い事をやっている」というスタンスは、過去のリプレイの概念を完全に崩していました。
そもそもセブン=フォートレスというTRPGは、リプレイ連載当時は世界観どころかシステムすらも完成していなかったのですから、ルールの指南書として機能するはずもないのです(笑)。
さらに、終始徹底して「面白ければ良い」というスタンスを貫いているので、でっかい蟹を着込んだ様なカニアーマーカニの脚からは「蟹光線」を放つ)なんてネタ優先の設定や、誰もが元ネタがわかる様なパロディもばんばんやっていました。
世界観が明確に決まっていないからこそ出来た暴挙という部分は確かにありましたが、後に世界観をしっかり作り込んだ作品で菊池たけしさんがリプレイを行っても「面白ければ良い」という基本姿勢が崩れる事はなく、それどころかネタやパロディを最初から世界観や設定に組み込む様になっています。
無論、こういうスタイルが嫌いな人もいるでしょうから、これが正しいTRPGの在り方と言うには語弊があるかも知れません。
しかしTRPGはここまで面白くできるんですよ!」という大きな可能性を提示した事は間違いありません。
そんな菊池たけしさんもリプレイを書き続けて20年。
時代が変わればそれに合わせて新しい物を取り入れ、面白い物に出会ったら貪欲にそれを吸収し、未だに新しい物を生み出し続けています。
時代に合わせる余り、時間と共に風化してしまうネタが多分に含まれているという側面も持っているのですが、TRPGなんて物は「参加者が楽しんでなんぼ」ですからね。
必ずしも普遍的な名作を生み出す必要はなく、その時に楽しめる極上のエンターテイメントを提供すれば良いだけです。
最近では、菊池たけしさん以外にも面白いリプレイを書く人が増えてきたので、「一番好きなリプレイは?」とか、「続きが気になるリプレイは?」と聞かれると別の方の作品を挙げてしまう俺ですが、自分がTRPGに関わる時に一番影響が出るのは間違いなく菊池たけしさんですね。
あと、自分がGMをやる時に一番使いやすいのも菊池たけしさんが作った、もしくは大きく関わった作品ですね。
俺はGMをやってもプレイヤーをやっても、漫画やアニメやゲームと言った何かしらの元ネタをヒントに作り上げていく事が多いので、独創性のある世界観や設定が多い作品より「このネタは○○のアレだよね?」とか「コレとコレを組み合わせると○○のアレが作れるよね?」といった、わかりやすいネタやパロディが含まれていると非常に楽なんですよね(笑)。
実際、ネタとかパロディというのは情報の共有を図る上では、かなり便利なやり方ですからね。
凝った設定を長々説明しても人に伝わるのはほんの数割、下手すれば数パーセント。
でも、ネタやパロディを絡ませると細かい説明などしなくても全貌を理解してくれる場合があります。