ナイトウィザード The VIDEO GAME Denial of the world

長い上に良い略称が浮かばないタイトルっスね。
とりあえず買いました。PS2ナイトウィザード
もう、最初から地雷を踏む覚悟で!(笑)
結論から言うと見事に地雷だったわけですが(アニメに合わせた短期間で制作した低予算ゲームですからね)、予想とは全く違う意味で地雷でした。
アニメに合わせて作られたにもかかわらず、アニメの内容を全く踏襲しておりません。一応アニメの序盤の話は活かしているものの、アニメの話は全く無視してオリジナルの話が進みます。
初回限定版には志宝エリスのフィギュアがついて来るというのに、そのエリスはゲームではろくな出番のない脇役というのがなんとも(笑)。
ただ、意外なことにオリジナルの話は実に原作っぽい雰囲気を持っています。アニメ版を無視しているのに原作には結構忠実という意外な展開。原作ファンとしては嬉しいことです。
ストーリーも、
「このネタをTRPGのシナリオで使ったら結構面白いセッションが出来るんじゃないかな?」
と思える内容です。
ただし、あくまでTRPGでやるなら」という話。
アドベンチャーゲームのストーリーとしては色々と問題があります。
まず一番マズイのは、オリジナルキャラである望月チハヤが、キャラとしての魅力がイマイチな上に言動に共感も出来ないという点。助けてあげようと言う気が起きません。
眼鏡の委員長タイプというだけで一般受けが難しい。加えて、自分の主張を曲げない堅物タイプなので、明らかに嫌われるタイプの委員長キャラです。
もちろん、ストーリーが進むとそれが解消されていくのだろうとは思いますが、ただでさえ反感を買いやすいオリジナルキャラをわざわざ取っつきの悪い性格にしなくても……。そして、第一印象の悪さに追い打ちをかける設定が出てきます。
チハヤはエコロジーボランティア部(エコボラ部)の部長をしており、部活の時間には街に出てゴミ拾いをしています。
それ自体は非常に良いことです。ただ、真面目すぎる上にそれを人にまで押しつけようとするので……なんというか……端的に言うとウザイです。
そして、一人では分別するのも大変な量のゴミを集めてきてしまうので、処理しきれなかったゴミはどんどん部室に溜められていき、遂に部室はゴミ屋敷と化している始末……。
堅物な委員長タイプでゴミ部室の主……。印象悪すぎませんか?
ただ、TRPGでこういうキャラをやるのは別に問題ないんですよね。
んでは、TRPG風にシミュレート。


GM「ではセッションを開始したいと思います」
一同「おー、ぱちぱちぱちー♪」
柊蓮司「……と、その前にひとつ質問があるんですが」
GM「うい?」
柊蓮司「このゲームって、アニメ版と同じキャラを使うって聞いてましたが。……エリスのプレイヤーがいません(笑)」
GM「こ、今回はエリス抜きでいく。かわりにチハヤに参加してもらう」
赤羽くれは「はわっ!メインヒロイン不在!?」
GM「気にするな」
赤羽くれは「気にします!?」
GM「えー、ゲーム版はアニメ版のことを気にしない、お気楽ノリのセッションでいこーと思いまーす(笑)」
一同「ほーい」

GM「チハヤはエコロジーボランティア部、略称エコボラ部の部長ですが、現在は部員不足で困っています。いちおーこのゲーム版のヒロインとして、キャラを立てていきたいと考えているので……よろしく(笑)」
望月チハヤ「エコボラ部の部長なので、真面目な委員長タイプでいこうと思います。ただ、真面目すぎるので部員がついて行けなくなってやめていってしまうという感じで」
GM「おー」
望月チハヤ「あと、真面目なので毎日山のようにゴミを拾い集めてしまい、分別しきれなかったゴミが部室にどんどん溜まっています」
GM「ゴミ屋敷じゃねーか!」
柊蓮司「部室がその様じゃ、部員を集めるどころじゃないだろ」
望月チハヤ「いえ。ちょっと匂いがしたりハエが飛び回ったりしていますが、綺麗好きなのでちゃんと整理整頓はされています。部員の受け入れ準備はばっちりです」
GM「ちげーだろ!そういうことじゃないだろ!」
柊蓮司「光の速さでヒロインからスピンアウトしていくな……」


TRPGだったら面白いキャラになりそうなんですよねー(笑)。
なお、会話の内容はアリアンロッド・リプレイEX「死者の花嫁」の会話を元にしました。ヒロインのスピンアウトといえばやはりこれかなと思いまして。


で、ヒロイン以外にも問題点があります。このゲームは柊蓮司を主人公としていながらも、主人公の一人称視点では描かれません。
基本的にゲーム中の文章はキャラクターの台詞のみで構成されているので、文章による情景描写や柊蓮司の心理描写という物がありません。
そして、キャラクターの心の声、特にチハヤの心の声が会話の中で普通に出てきます。
それだけではなく、柊蓮司が知らないところでチハヤがベール=ゼファーに操られるシーンなども普通に会話で進行してしまいます。
そのため、プレイヤーには柊蓮司が知らないはずの情報がだだ漏れ。でも何も知らない柊蓮司を操ってストーリーを進めなければならないという矛盾……。
あらゆる情報を早い段階でネタバレしてくれるので、ストーリーを進めても「な、なんだってー!」という驚きが全くありません(笑)。
「先々まで読める王道パターン」と「先々までわかるネタバレ」は似て非なる物ですねー(笑)。
ただ、これもTRPGだったらこれはこれで面白くなるんですよね。パーティをあえて分断して、対立させるような状況を作り出す。それぞれに情報は出すので、プレイヤーはシナリオのネタがわかっている。ただ、キャラクターはそれを知らないので思うように動けない。プレイヤーがある程度なれていないとこういうネタは上手くいきませんけどね。

で、ゲームの方ですが、当たり前の選択肢を当たり前に選んでいくと、当たり前のようにベストエンドに辿り着いてしまうから、ネタバレに輪をかけて驚きがありません。ただ、驚くのはその後でした……。
いきなりベストエンドに辿り着いたとは言え、マルチエンディングだから他のルートに行けば全く違う展開の話とかが楽しめるはずです。
しかし、一周目とは違う選択肢を選べども選べども、細かい会話が変わるだけでストーリーが全く変わりません。
なんと、ナイトウィザード一本道マルチエンディングなアドベンチャーゲームなのでした!
さらに、エンディングの分岐は単純な選択肢ではなく、選択肢により増減するパラメーターのバランスによって決定されます。柊蓮司に関するパラメーターは一話ごとに発表される柊ランクである程度わかりますが、チハヤのランクに関しては明確な判断材料がありません。
選択肢を選んだ時にもパラメーターの増減があったかどうかははっきりとしません。
つまり、クリア近くになるまでどのエンディングに向かっているのか判断できず、どこをどうやり直せば状況が変わるかもはっきりしないのでセーブロードの繰り返しで調整するのも難しい。
新しいエンディングを探すために、一本道を何度も何度もやり直さなければいけないので繰り返しプレイする気力を維持するのが大変です。
スキップ機能を使えば既読部分は高速で飛ばせるのですが、RPG的なコマンドバトルがあるために、スキップしまくっても1プレイに1時間以上かかってしまいます。
戦闘シーンの完成度が高ければまだ良かったのですが、余り凝った駆け引きもないので一周プレイする途中で戦闘シーンには飽きてしまい、二周目以降は苦痛にしかなりません。
二周目以降は戦闘シーンもスキップできるようにして欲しかったです……。
これならいっそ、女性キャラが多いのを良いことに、単純な選択肢分岐で進むギャルゲー的アドベンチャーの方が苦もなくプレイできた……。というか、俺が地雷として覚悟していたのはそう言う方向でした。
まさか、無駄に全クリの難易度が高い一本道ゲームだったとは……。
一周目の印象は「キャラゲーならこんなもんでしょ。ちゃんとナイトウィザードしてるんだから上出来ですよ」と、比較的好意的な印象だったんですけどねー。

ナイトウィザード The VIDEO GAME ~Denial of the World~(初回限定版)

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